作品

赤い道標

東北の海沿いの街。そこは赤い道標のある街。海から高台にかけて、人々の暮らしに寄り添う電柱が、一定の高さを境界面として、赤く染め上げられている。その風景はここで暮らす人々にとっていつからか日常の風景となっている。しかしここで暮らす人々はその道標が示す意味をみな知っている。自然の猛威の前に多くの犠牲を払った歴史の爪あと。その道標は日常に寄り添いながら、未来に繰り返されるかもしれない猛威に際し、人々にかけがいのない警告として、道しるべとしてそこにある。今後さまざまな対策が土木的、建築的に進められるだろう。しかし、自然の猛威を予測することが不可能なように、人々の住み方を画一化することも不可能ではないだろうか。私は自然な生活の営みを受け入れながら、悲しい歴史による貴重な示唆を街にダイレクトに記述する方法を考えた。失われた街にかろうじてたった一色だけ付け加える方法になっているだろうか。

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