作品

JR灘駅南側駅前広場

JR灘駅南側駅前広場
設計:E-DESIGN・畑友洋建築設計事務所・モビリティデザイン工房設計JV
構造設計:萬田隆構造設計事務所

令和2年に行われたプロポーザルを経て、再整備されたJR灘駅の駅前広場。プロポーザルでは駅の南北広場の再整備計画を前提としており、この度整備が完了した広場は、このうちの南側にあたる。
そもそも六甲山系から瀬戸内海に向かう大きな地勢の中での斜面地である神戸において、フラットな広場を整備すると、ひな壇状の造成が前提となり、必然的に擁壁に囲まれたものとなる。既存の駅前広場も、ひな壇造成による擁壁花壇に囲まれ、周囲の街と区画された見通しの悪い状況となっていた。
そこで、私たちは既存の広場の擁壁を撤去し、そもそも存在していた緩やかな傾斜に広場そのものを戻すことで、街と地続きな広場を生み出すことを計画のスタートとした。擁壁を撤去することで花壇から解放された既存樹を中心とする木々は、緩やかな斜面の広場に広がる森のような木陰を生み出す存在へと変化させた。
また、JR灘駅は北には過去に前衛芸術家が議論の場としていた原田の森があり、現在は原田の森ギャラリーを中心とした文化施設が集積しており、南には兵庫県立美術館を中心とする文化施設が集積するエリアを結びつける位置に存在していることから、我々は、この広場を南北のアートを中心とする文化施設を結びつける南北軸の拠点と位置づけ、美術館の前庭のような広場としてのイメージを持っていた。具体的には広場内に個性豊かなアートを点在させ、木陰の滞留空間を中心に様々な場所からアートを楽しむことのできる広場とすることを目指した。
そこで、樹木の緑陰を補完し、安定した木陰を広場に生み出すことを意図し、広場の傾斜に合わせ、つづら折れにたなびく雲のようなシェルターを計画した。このたなびく雲のようなシェルターは夏季の地表面温度を効果的に下げる位置を温熱環境シミュレーションによって導き、また都市の風環境を考慮し、広場内に心地よい風を導く存在としてもスタディーを重ね具体的な形態を導いた。
広場に配置されるアートは、それぞれに個性を持ち、場合によっては自由に入れ替わることができるような個別性を許容することを想定しており、アートを中心とする広場の滞留空間それぞれが、固有の様相を呈することが想定された。そこで、日本の錦絵のなかに現れ、絵の矛盾を調定しながら一つの全体性を導く存在として描かれるたなびく雲のように、雲のようなシェルターが個性的なアートの空間をおおらかに一つの広場へとまとめあげる存在として位置づけ、広場が街へと連続し、ミュージアムロードとを介して南北のアートの拠点を結び、この街が持つ固有の文化的広がりを創生することを目指す試みである。

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